執筆:森本高史(フットボールジャーナリスト) 
「Do you know Nakamura?」
【エルゴラッソ】6/22
 
現在アメリカで熱戦が繰り広げられているCONCACAFゴールドカップの試合会場で頻繁に聞かれる質問だ。

中村といっても、セルティックの俊輔でもなければ、ましてや川崎の憲剛でもない。タケのニックネームで
親しまれる中村武彦(31歳)である。MLS(メジャーリーグサッカー)/SUM(サッカーユナイテッドマーケティング)
国際部に勤務するサッカービジネス海外組。今大会は6月13日のグループC最終節と17日の準々決勝が行われた
ヒューストンのベニューマネージャーとして、全てに携わった唯一の日本人である。 

「わずか4日間ですが、そのための準備は膨大な量でした」とタケは苦笑いをする。
 
「まずは、1月からプロモーションをスタートしました。漠然と『来て下さい』ではなく、
多数住むメキシコ系住民にターゲットを絞りました。彼らが集まる国際テレホンカードの販売店などに
アプローチを仕掛けましたし、所得が高くないことを考慮に入れて、ゴール裏のチケットは20ドルまで
下げ薄利多売の関係から収容人員71500人のビッグスタジアムを使用しました。レアル・マドリーだと
みんな無条件で見に来たいからチケット価格を高くできるので、3万人程度のスタジアムでいいんですけど」 

 大会運営もそうだ。練習場、ホテル、移動手段、セキュリティ、用具、病院、
その他チームが必要とする全てのことを事前に確保した。タケの本業は、ゴールドカップ組織委員会ではない。
SUMの社員であり、同様の仕事を多数抱えている。1月には
メキシコ勢のリベルタドーレスカップ出場を決める
インターリーガ、5月にはアイルランド代表USツアーをこなしながらゴールドカップの準備を進めなければならない。
4月には左足首の手術を行い、松葉杖生活が続いていた。 

 大会が始まると、各チームとの直接交渉という最難関の任務がある。 

「例えば、練習。ここに複数のチームがいるわけですから、必ずしも希望の時間、場所に割り当てられるわけではありません。
重なったら? 公平を期すため早い者勝ちです。当日になって変更したいと連絡があったにもかかわらず、
早く確保しろとプレッシャーをかけてきます。練習場に迷惑がかかるし、本当に困難を極めます」 

 各チームとも次から次へとクレームを付けてきて、タケの携帯電話はひっきりなしに鳴っている。
メキシコ、ホンジュラス、キューバ、パナマ、コスタリカ、グア
ドループの計6チームがヒューストンにやってきたが、
要求はそれぞれ異なる。 

「最上級の異文化体験ですよ。日本人の僕が、ホンジュラスやグアドループ代表などと地元のアメリカ人の
パイプ役を担っているわけですから」 

 果たしてタケの仕事は成功に終わったのか。答えはイエスだ。 
試合は、それぞれ68417人、
70092人とテキサス州観客動員記録3位、2位という大盛況だった。晩餐会の席ではジャック・ワーナー
CONCACAF会長から

「大観衆が詰め掛けたスタジアム、SUMのみなさんの熱心な働きぶりには素直に感動した」と最高級の評価をもらい、
2018年ワールドカップアメリカ招致を約束したという。 

「サッカー人気低下をドイツ大会の惨敗のせいにするのはナンセンス。アメリカはグループリーグ敗退でしたけど、
ゴールドカップの観客動員数は伸びています。試合なり大会を盛り上げるためにしかるべき努力を行えば結果は
自ずと付いてくる。これは全世界共通のはずです。今やアメリカはサッカー不毛の地から
隠れたサッカー大国と変貌を遂げており、微力ながら関われたことに誇りに思います」と語るタケは、
いつの日かアメリカで得た経験を日本のサッカー界で活かせることを夢見ている。

 


         Copyright © 2002 Takehiko Nakamura.
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